瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

紅花

紅花は、葉にはトゲがあり、花は紅黄色で、形はアザミに似ている。
花を摘み取り、染料や紅を作るから、末摘花(すえつむはな)とも言う。
末摘花は、源氏物語の巻の名にもあって、主人公の常陸宮の女は、赤鼻のしこめだ。
旧暦の手書きひめくり“ひめ暦”のとじひもは、瞳堂酒人が、毎年、絹糸を紅花で染めている。
先ず、紅花の花弁を水にさらす。水を何度も替えて、黄色い水を洗い出す。すると、花弁の紅だけが、鮮やかに残る。
ソーダ灰を入れて、花弁を丁寧にもんだところに水を加えて、紅花液をしぼり出す。この段階では、赤褐色のドロッとした液体だ。
そこに、酸を入れて中和したのを、少しあたためて、絹糸をひたして染めていく。ゆっくりと、色が入っていく。
絹糸を引き上げて、乾くまでが待ち遠しい。
この作業を10年くり返しているが、なかなか思った色に仕上がらない。それでも、一度も失敗はない。どの色も、必ず気に入ってしまうんだな。
ひめ暦づくりの、多くの工程の中でも一番ワクワクする楽しい作業だ。
染めとしては、あまり堅牢度は高くなく、変化するところに命がある。
紅花染めの色の移ろいは、美しい四季の変化や、月の満ち欠けに、どこか似ている。