瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

鵺(ぬえ)ってのがいる。顔がサルで、胴体がタヌキ、手足がトラで、尾がヘビ。夜、「ヒョー、ヒョー」と薄気味悪い声で鳴く。その昔、闇がこの世を支配していた頃には、確かに鵺はいたんだろう。今は、得体の知れない人のことを鵺って呼ぶね。それから、鵺…

福神漬

福神漬は明治生まれ。上野の老舗漬物屋の15代目が開発した。店が不忍池の弁天さんの近くなんで、福神に因んだ名なのか。材料が、大根・なす・なた豆・蓮根・しいたけ・しそ・うりの七種類だから、七福神にあやかったのか。今となっちゃあ分からない。福神漬…

河原町のジュリー

当時の京都にいたら、河原町のジュリーを知らない奴はいない。長い髪の毛はベタベタで、赤黒い顔。ボロボロの黒い服を着て、いつも裸足で歩いてた。要はレゲエのおじさんなんだけど、『河原町のジュリー』って呼ばれてた。浮浪者って言うより、奇人って感じ…

単純作業

ひめ暦は、旧暦のひめくり。作業は単純。和紙を切り、ミシン目を入れる。新暦の日付のスタンプを捺す。旧暦の日付を筆で書く。各月ごとの色絵を描く。絹糸を紅花で染める。書き上がりの紙をそろえる。穴をあけて絹糸でとじる。まちがいが無いか確かめて、タ…

平家物語

平家物語と源氏物語は、対だと思ってた。源氏物語を読み始めたけど、なかなか源氏が戦おうとしないから、途中でやめた。平家物語は、信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)って人が書いたんだってね。 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の…

ガッポン

ガッポンはえらい。たいがいの詰まりは解消してくれる。あれ、正式名称は“ラバーカップ”っていう。水が流れないってのは本当に困るし、すごいストレスだ。業者呼ぶって言っても、作業は一瞬なのに、結構高いんでね。必要かもしれないけど、ガッポン欲しくて…

すっぱ鶏

うちの子は、すっぱ鶏が好きだ。酢と醤油と水を同割りにした煮汁に、砂糖を少し加え、ニンニクと生姜のスライスを同量入れて火にかける。煮立ったら、鶏の手羽元を大量に入れて煮る。これが、すっぱ鶏だ。特に長く煮込む必要はないけど、二日目の方が、身ば…

なゐふる

なゐふるってのは、地震のこと。「なゐ」は「大地」で、「ふる」は「震動する」だから、「なゐふる」は地震。昔は、そう呼んでいた。なにしろ、土ん中で大鯰が暴れて、地震が起きるって信じられていた。今でこそ、地震発生のメカニズムは少し分かりかけてき…

うぐいす

梅にうぐいす ホーホケキョ。これ、うぐいすじゃないんだな。梅の枝にとまるウグイス色の鳥の正体は、メジロだ。梅の花の蜜を吸いにやって来る。よく見たら、目のまわりに白い輪があるから、メジロと分かるよ。本物のうぐいすは、一般に思われているウグイス…

花粉症

21年前の3月に、突然クシャミの発作に襲われて以来の花粉症だ。毎年のパターンで、はじめはクシャミがひどくて、鼻水が止まらない。そのうち、鼻が詰まって息が出来なくなる。点鼻薬も、最初は魔法のように効くんだけど、だんだん効かなくなって、副鼻腔炎に…

山葵

葉っぱが葵に似てるからだろうか。山の葵と書いて、わさび。懐石料理を10人分こしらえることになってね。鯛の昆布〆を出すことになったんだけど、チューブのわさびを使うわけにもいかず、高いけど本物を買った。めったに使わないだろうけど、鮫皮のおろし…

おっかない字を見た。たった二文字『孤桂』だけなんだけどね。筆の根元まで使った太い字で、何の技巧もなく書いている。特に気合を入れて書いたってわけじゃないんだろうが、凄い威圧感なんだな。心が無い、精神だけで生きているような人の字だ。多分、坊さ…

抹茶

それ用にこしらえた茶っ葉を、石臼でひいて粉にしたのが抹茶。お茶の一種だけど、急須には入れない。茶筅ってのが必要なんだな。竹で出来た小型の泡だて器みたいなやつ。あと、抹茶を掬うのに、耳掻きの親玉みたいな茶杓ってのを使う。飲み方に、薄茶と濃茶…

アイドル

昔のアイドルが出る番組があった。当時の映像をやるのかと思ったら、今の実物が出てきて歌った。変わった人あり、変わらない人あり、でも、今の方がいい顔してる人が多い。いつも輝いてるのが、アイドルってことか。曲もすごくいいってことに気づく。初めて…

大地震のあと、大風が吹くことがある。因果関係は分かんないけど、なにしろ吹く。月の引力が、関わっているのかも知れない。さて、風はどこから来て、どこへ行くのか。ずっと吹いてるわけじゃないなら、始まりがあれば終わりもある。吹き溜まりってのがある…

不自由

自由はよくて、不自由はよくないのか。自由と不自由は、真反対にみえるけど、案外、隣り合わせのような気がする。どんなに自由だって言ったって、人生の枠の中での話しだ。生老病死。生まれたからには、やがて老い、病を得ては、ついに死ぬ。だから、不自由…

雛人形

うちは、まだ雛人形が出してある。3月3日はとっくに過ぎたけどね。娘を早く嫁にやりたくないからってわけじゃない。今年は3月24日が、旧暦の弥生の三日なんでね。本当の雛祭りは、まだ先ってこと。それに、桃の花もまだだから。ずっと寒かったんで、旧…

ホタルイカ

ホタルイカは、ツツイカ目ホタルイカモドキ科のイカだ。ホタルイカなのに、ホタルイカモドキ科ってのは納得いかないけどね。富山湾のが有名だけど、普段はグッと深いところにいて、春の産卵の頃に、浅いところに上がってくる。ホタルみたいに光るからホタル…

一年

デパートの地下で、商品を手に取った瞬間に、館内放送で「黙祷!」と言われて、目を閉じた。あれから一年。何が変わったか。あの直後から、変わらず暮らそうと思ってきた。そのことで、誰かを助けられるとは思ってない。ただ淡々と生きた。それでも、大事な身…

娑婆

娑婆(しゃば)は自由なのか。中に入れられて、自由を束縛されてる人間にとって、外の自由な世界を娑婆という。「早く娑婆に出てぇ」なんてね。仏教でいう娑婆ってのは、人の住むこの世のことだ。つまり、迷い苦しみ耐える世界。全く逆の意味だな。江戸時代…

ニガスの太鼓

言葉には言霊(ことだま)が宿るという。音にも音霊(おとだま)ってのがあると思う。歌を聞いて、歌詞に感動することがある。メロディーがいいと感じることもある。声にやられることもある。でも、つきつめりゃ、“音”ってことになるんだろう。それは、楽器…

西行

今日は、旧暦の如月十六日。西行の命日。俗名は佐藤義清(のりきよ)って言って、北面の武士だった。それが何を思ったか、23歳で出家して、各地を旅して歌を詠んだ。「ねがはくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月のころ」ってのがある。“花”はサク…

秒針

秒針は忙しい。ズーッとグルグル回ってる。でも考えたら、長針も短針もゆっくりだけど回ってるんだった。秒針は1周で1分。長針が1周で60分。短針が1周、12時間(720分)。秒針は長針の60倍、短針の720倍のスピードで動いている。秒針はけなげだね。こっ…

なめくじ

かたつむりの目をつついて遊ぶ子どもはいても、なめくじのをつつきたがる奴はいない。貝殻があるかないかの違いだけなのにね。進化の方向性でいうと、なめくじの方が進んでいる。でも、殻がついてないと何か不安になるんだな。エスカルゴも、殻がなかったら…

空腹

人はいつメシを喰うか。「腹が減ったら喰う」と答えられたら幸せだ。たいがいは、時間決めか、仕事の合間っていう段取りになる。空腹を自覚しないで、食事してる人も多いんじゃないかな。商業主義にのせられて、空腹じゃないのに、食べたがらせられてるきら…

ジャンゴ・ラインハルト

ラジオから流れる曲に、ふいに涙が出た。そして、頭の後ろのあたりがジーンとしびれた。それは、ジャンゴ・ラインハルトって人のギターだった。どんなギタリストなんだろう。多分、もうこの世の人ではない。感動して、後頭部がしびれるのは、死んだ人の時だ…

キムチ

こないだ、うちのが韓国の友達の家で、キムチの漬け方を教わってきた。白菜のとキュウリのやつ。美味いんだけど、何しろ辛い。辛いのは好きなんだけど、汗が困る。代謝がいいのか、首から上だけ、湯上りみたいに汗だくだ。汗かくと、体力消耗して疲れる。唐…

外面如菩薩

“外面如菩薩 内心如夜叉”「げめんにょぼさつ ないしんにょやしゃ」と読む。見た目は菩薩のように柔和だけど、内心は夜叉のように恐ろしいことを言う。これは、美人は心が鬼だから気をつけろって意味ではない。菩薩のように見えるほどの人ですら、心に夜叉が…

春雪

きのう、思いがけず雪が降った。うるう年でなければ、3月の雪だ。春に向かう最中に、冬を思い起こさせる雪。過ぎ去った時を思い起こさせながら、それら全てを白くおおい尽くしてゆく。終わってみれば、良い事ばかりだった。でも実際は、いろんな感情が渦巻…