瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

鵺(ぬえ)ってのがいる。
顔がサルで、胴体がタヌキ、手足がトラで、尾がヘビ。
夜、「ヒョー、ヒョー」と薄気味悪い声で鳴く。
その昔、闇がこの世を支配していた頃には、確かに鵺はいたんだろう。
今は、得体の知れない人のことを鵺って呼ぶね。
それから、鵺っていう銘の茶碗がある。
楽家の三代目、道入、別名ノンコウがこしらえた茶碗だ。
やや大ぶりな赤楽なんだけど、全体にくすんだ色合いで、手前の薄墨を刷いたような景色が、どことなく得体の知れない感じがする。
これは、日の光や電灯の光を当てて見るもんじゃない。
薄暗い茶室か、月影の下で、そっと目を閉じて見る茶碗だ。