瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

逢魔が時

夕方、出かけようとして、得体の知れない不安に襲われた。空は紫色に暮れかかってるのに、建物の壁には、ぼんやり薄赤いものが漂っている。見るうちに、どんどん暗い影がしのび寄って来る。昼と夜のはざま、どちらとも言えない危険な瞬間だ。逢魔が時(おう…

寒仕込み

味噌を仕込んだ。節分までが寒の内だから、寒仕込みってやつ。やり方は簡単だ。水にひたした大豆を、やわらかく煮る。煮あがった大豆は水をきって、つぶしておく。米麹と塩を、つぶした大豆と合わせる。そいつを甕に入れて、重石をし、冷暗所に保存する。梅…

カモシカ

カモシカはシカではない。もちろん、カモでもない。ウシ目ウシ科の動物だ。名前はややこしいが、特別天然記念物だ。中国で言ったら、ジャイアントパンダなみの扱いになる。実物は見たことがない。昔、8円切手がカモシカの絵だったのを覚えている。ところで…

選ぶ

今日は、結婚記念日。ずいぶんと長く夫婦をしている。何となくくっついたって感じもするけど、多くの中から選んだと言えなくもない。日常の中、意識はしなくても、人はいたるところで選んでいる。意識的か無意識かによらず、いろいろ選んだ結果が今なんだろ…

渋谷の小さな公園の池に、氷が張っていた。やっぱり、寒の内は東京でも寒いや。寒中見舞いってのがあるけど、“寒くって大変ですね”ってあいさつはしたくない。“この寒さ 楽しんでますか”って具合にいきたいもんだ。霜柱をサクサク踏むのも楽しいし、雪の降る…

眠り

幼稚園の頃、眠るのがこわかった。寝つきが悪く、柱時計の音に目が冴えていった。そのうちに、眠ったらそのまま死んじゃうんじゃないかなんて考え始める。眠ってる間に死んじゃって、自分だけそのことに気づかずにいる。死んだことを知らずにいるこわさ。だ…

山中無暦日

床の間に掛軸、『山中無暦日』。“山中 暦日なし”って読むんだってね。ただ自然とともに暮らし、暦すなはち、世間の時間の流れにとらわれることなく生きるってことだろう。こっちが旧暦をひろめようとしてるところへ、“暦日なし”と来た。暦ってのは、太陽の動…

シャローム

♪どこかで またいつか あえるさ またあおう またあおう どこかで きれいな おもいで だきしめ またあおう またあおう どこかで みどりの ほしふたつ よりそう はなれても はなれても よりそう♪これ、シャローム。イスラエル民謡。シャロームってのは、平和・…

発酵食品

味噌、醤油、酒、みりん、酢は発酵食品。調味料だから、好きも嫌いもないだろう。納豆、塩辛、くさや、鮒寿司も発酵食品。これは、そのまんま食べられるものを、わざわざ発酵させたものだ。臭いや食感が独特で、好きな人にはたまらないし、嫌いな人にもたま…

変体仮名

花札の赤短に『あのよろし』ってのがある。でもよく見ると、「の」の上に点が打ってある。実は「か」と読む。「可」をくずした変体仮名の「か」。だから「あかよろし」と読んで、あきらかによろしいって意味らしい。蕎麦屋の暖簾の『生○○』は、「楚」をくず…

寒い。どうりで、今日は大寒だ。大寒をはさんで、小寒から節分までの約30日間を、寒の内と言う。一年の中で一番寒く厳しい時期だけど、寒ブリや寒しじみなんて美味もある。大寒に鶏が産んだ卵を、大寒卵って言って、食べると金運に恵まれるって言うね。厳し…

あんまり雪の降らないところで育ったんで、大人になった今も雪が嬉しい。寒いし足元も悪いのに、雪の日は外を歩きたくなる。家にいても寒いだけなんでね。空を見上げてると、あとからあとから雪が舞い降りてきて、うもれそうな気になる。今日の雪は積もりそ…

自己心為師

裏庭の椿が、やっと咲きかけた。そろりの花入れに生けて、床の間に飾る。掛軸は、坊さんの字で、『自己心為師』ってやつだ。何て読むんだろう。「自己心、師となす」かな。これまた意味が分かんない。「自分の心を師匠にする」ってとこだろうか。ずいぶんと…

過去

過去は変えられない。未来は変えられる。ずっとそう思ってたけど、本当かね。未来は360°開けていて、どの方向に進むことも可能だってのは、想定上の話。生身の人間には癖がある。癖があるから、そういう過去があり、そんな未来が待っている。だから、未来を…

すんき漬

木曽の土産で、すんき漬ってのをもらった。材料は、赤かぶの葉っぱと茎。これが、すっぱいだけでそっけない。今までに食べた漬物の中で、いちばん無愛想だ。ところが、しばらくするとまた食べたくなる。それ自体、美味いってモンでもない。かみしめて、口の…

訪れ

最近、襖の向こうに何物かの気配を感じる。開けてみるけど、誰もいない。それで、断酒することにした。感覚をクリアにしようと思ってね。やっぱり、呑まないとつまんなくて、眠くないのに布団に入った。仰向けに寝て、仏みたいに胸の上で手を組み合わせる。…

呼吸

呼吸大事。生まれてこのかた、誰に教わった訳でもないのに、ずっと呼吸をしている。でも、正しく呼吸できてるだろうか。呼吸の「呼」は吐き出す息、「吸」は吸い込む息のこと。吸ってばっかっりでも、吐いてばっかりでも苦しい。吸うのと吐くののバランスの…

能面

能面はこわい。こわいけど見たい。増女(ぞうおんな)ってのがあってね。これは、増阿弥って人が作った女面だ。無表情の中に、すべての感情を秘している。やや下から見た時の艶めかしさは、この世のものとも思えない。面打ち師が、一片の木から彫り出した、…

断酒

元日は、一升ほど呑んだ。次の日、特に頭痛も吐き気もなかった。ただ、身体の芯のあたりが細かく震えていて、それは夕方まで続いた。こいつは、あれかも知れないな。酒量は昔の半分以下になったが、切れ目なく呑み続けてるからね。いよいよ潮時か。断酒、そ…