瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

能面

能面はこわい。
こわいけど見たい。
増女(ぞうおんな)ってのがあってね。
これは、増阿弥って人が作った女面だ。
無表情の中に、すべての感情を秘している。
やや下から見た時の艶めかしさは、この世のものとも思えない。
面打ち師が、一片の木から彫り出した、この世のものならぬもの。
そいつが、こわさの正体だろう。
能面を見ると、こっちの内側をのぞき込まれる。
自分の心の中身が、面の上に浮かび上がってくる。
だから、こわいけど見たいんだな。
心を映すってところ、能面と月は似てるね。
ただ、能面は容赦がないけど、月にはどこか優しさがある。