瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

相当昔の話なので、前後のことは覚えてないが、皆の前で師匠が言った。
「さて、家が出来上がり、建具屋が襖を運び込む。その時、寸法が合わなくっても、鴨居や敷居はいじりませんよ。襖の上下を鉋で削るもんなんです。」
人も襖と同じだって言うんだな。
後から入って来たもんが、小さく身をかがめ、前からあったものに合わせてゆくもんだって。
和風の和は、調和の和だ。
これも、日本の美徳の一つだったはずだ。
何でも新しいものがいい、技術的に進んだものが良いものだ、というだけの世の中では、やがて行き詰まる日が来る。
いや、もう来ている。
やろうと思えばやることもできたが、先人達があえて、そうはしなかったことにこそ学ぶべきだ。
明治の太陽暦への改暦は、襖どころか、分厚いドアを持ち込んで、鴨居と敷居を削りまくって、はめ込んだようなもんだ。
今もう一度、もとあった旧暦の価値観を見直すべき時が来ている。
ちなみに、この話をしたのは、こっちと誕生日が同じで、丁度50才年上の茶の湯の師匠で、今も御健在と聞く。