瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

二十六夜待ち

今じゃ知る人もほとんどいないが、昔は二十六夜待ちって行事があった。
今日が旧暦七月二十六日、丁度その日に当たる。
十六夜の月は真夜中に出る。受け月っていって、三日月の逆向きで少し太めの月が、上に口をあけて昇ってくる。
その姿が、観音菩薩勢至菩薩を従えた阿弥陀様に見えるってんで、江戸の人たちは、高輪とか愛宕とか湯島の高台に繰り出して、料理屋で飲んで喰って歌って、呑気に月の出を待ったもんだ。
大気の状態かなんかの影響で、細い月が、たまたま阿弥陀三尊に見えただけかもしれないし、半分は夜遊びの口実なんだろうが、そんな夜中に、月の出に静かに手を合わせた人々の心は、なんと尊いことだろうか。
この自然現象を神秘というより、江戸の人の心の中に、神秘は宿っていたんだろう。
真夜中といっても、明るく騒々しい街のビルの隙間から昇る月には何が宿る?
いつかどこかの静かな海辺で、二十六夜の月の出を、時を忘れて待つことができたら、それがこの世の極楽なんだな。