瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

浮世絵

どういうものか、浮世絵が好きでね。
浮世絵の美術館にはちょくちょく行くし、歌舞伎も見る。それ風の絵も、描いてみることもある。
浮世絵を勉強したいとか、浮世絵が欲しいと思ったことはない。ただ漠然と、そのたたずまいが、こっちの心にしっくりくるんだ。
浮世絵の下描きみたいな、絵師の筆遣いの生々しいのが展示されてたりすると、ガラスにへばりつくようにして、その筆跡を、なめ回すように目で追ってしまう。贅沢の極みだ。
藪から棒だが、浮世絵は金魚だ。
金魚は、金魚鉢の中にあってこその美で、あの異形の魚が川や海を泳いでいてはいけない。
浮世絵も、吉原や芝居や物語の中のような閉ざされた世界にあってこその美で、あの風体が往来を闊歩していては、不都合だ。
鎖国という、閉ざされた状況下に育まれた、純日本的美意識の形が、金魚であり浮世絵なんだろう。
開国し、文明開化となり、暦も旧暦から太陽暦に変わった時、金魚鉢はこわれてしまった。
その時点で、浮世絵の美は永遠に止まってしまったんだ。