瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

時計

国鉄の懐中時計を持っている。
これは祖父の形見だ。文字盤にSEIKOSHAと書いてある。
所々メッキがはがれ、少々サビは出ているが、竜頭をまけば、ちゃんと動く。
時計は正確なのが良いと思ってた頃もあって、デジタルを使ったこともあるが、今はもっぱら、手巻きか自動巻きのを使っている。
デジタルのは、何時何分何秒という点を正しく示すが、アナログのは、何時何分あたりって感じの時の流れを表しており、不思議と空間的広がりも感じさせる。
デジタルの4:50は4時50分だが、アナログの4時50分は5時10分前でもあり、あと10分で仕事が終わるという、上の空的お役所の空気を表すこともできる。
表情があり、懐が深い。
文字盤の上を、秒針と長針、短針がそれぞれのペースで動いているのを見ていると、月のめぐりと重なってくる。
それは、単なる点と点の連続ではなく、ずっと繋がりくり返す、ゆったりと優しい時の営みの姿だ。