瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

高尾山

都民の日だから、平日でも人が多いかと思ったが、すいてて良かった。山に来て、人の波にもまれるほど、アホらしい事はないんでね。
何回も登ってるのに、新鮮に感じるのは、多分、前に来たときのことを覚えてないからだ。
前日の雨のおかげで、山は秋の香に満ちている。
でこぼこの泥道を、一歩一歩踏みしめ、ときおり遠く小さく見える新宿のまちを見下ろしながら、頂上をめざして行く気分は、常に何かを強いられる日々の生活に比べたら、自由なんて言葉すら忘れるくらいに、開放的だ。
高尾山は海抜599mだから、高山病にはならない。頂上で、おにぎりを三つ食い、麦茶を飲む。
薬王院は、天平十六年、聖武天皇の勅令により、行基が開山し、今の本尊は飯縄大権現。その眷属は天狗である。まさに異形のものの世界だ。
樹齢400年を超える大杉は、真っ直ぐに天に伸び、はるかその天辺は、下からは見えない。
参道の燈籠に灯は入っても、山の気に支配される夜の闇は、むしろすさまじいことだろう。
あと二日で十五夜だが、もしここで一人、月を眺めることになったなら、正気でいられる自信はない。