瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

カルチャーショック

イタメシが流行る少し前の話。
急にパーティーが入ったとかで、マスターがバイトを探しに来た。
マスターは部のOBだが、こっちは初対面だった。
晩飯はスパゲッティーを好きなだけ食わせてやるって言うんで、手を上げたんだが、見た目と態度が良くなかったせいか、マスターはあまり良い顔をしなかった。でも、他に人がいなかった。
レストランに入るのは初めてで、イタリア料理なんて食ったことも無いのに、いきなり、コック服着て厨房入りだ。
白い皿に、美味そうな肉がのっかって、ライトのせいだか、すっごく光って見えた。テレビで見たのと全く同じだと思って、「うわっ、ホンモノだ!」って言ったら、シェフにすごく笑われた。その一皿は、まさにカルチャーショックだった。
仕事が終わり、マカナイはニンニクスパ(Spaghetti aglio,olio e peperoncino)だった。
金が無くて、いつも腹をすかせてたせいもあるけど、ものすごく美味くって、何しろ初めて喰ったもんだから、その時の味が、今も基準になっている。
働きぶりが、思ったより良かったのか、以後、定期的にバイトに入ることになり、結局、調理師免許を取らせてもらった。
多くのことを忘れる歳になったが、今でも何かの拍子に、あの時の一皿を思い出し、目頭が熱くなることがある。