瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

昭和のくらし

昭和のくらし博物館」に行ってきた。
博物館って言っても、昭和26年に建てられた木造の家に、家財道具があるだけだ。
芸術品や工芸品は、買い手もつくし値段もつくから、残ってゆくもんなんだけど、家財道具や古い浴衣なんてのは、こっちがお金払って処分するようなものだから、残そうと思わなきゃ残らない。
だから、ここは貴重な資料を大切に残した博物館なんだな。
玄関に入った瞬間に、おばあちゃんちに遊びに行った時の、懐かしい思いが蘇る。
ちゃぶ台、お櫃、竹のざる、火鉢、襖、柱時計、木の座机に、木枠のガラス窓。
ほとんどのものは、木と紙と土と鉄で出来ていて、プラスチックは見当たらない。
多くのことを自分でやっていたから、いくつか道具はあるけど、機械は無い。
道具は古くなっても、手入れして大切に使い、衣類は古くなったら、別のものに生まれ変わる。
柱時計の振り子のように、時は静かに行っては戻り、満ちては欠ける月のリズムが、全てを支配するくらしだ。
衣食住の衣は、ファッションではなく身だしなみであり、食は、質素にして海山の恵みにあふれ、住は、簡素なるがゆえに、自在の空間を形作る。
口が重くて声も小さいけど、これからの世の中のありように、ヒントをいっぱい与えてくれているのさ。