瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

江戸人

浮世絵を見てきた。
こっちの大好きな、西川祐信の絵が、珍しく2点出ていた。
版画と違い、肉筆の浮世絵だから、筆使いや息遣いまでも伝わってくる。
ここんとこは、祐信の筆がこうやって描いたんだななんて思うと、ガラスケースぎりぎりまで顔を寄せて、なめまわすように見てしまう。
そういう見方をしていると、時々、江戸の街に入り込んじゃうことがあるんだけど、あの街は、のんびりしてて実に良い。
不便な時代だから、何をするんでも手間がかかり、バタバタ忙しそうに思うけど、江戸人は全然あくせくしていない。
それは、絵の中だけの世界じゃない。絵は、時代の鏡だからね。
五行説に言うところの、宇宙の根源的要素に、木・火・土・金・水(もっかどごんすい)ってのがある。
浮世絵を見たら分かるけど、これらのものが江戸人の身の回りには常にあった。
土を耕し、草木を育て、水を汲み、火を起こし、鍋で煮る。江戸人は、生き生き暮らすのが仕事だ。
こういう単純なことが、今の生活からは遠のいている。
メシを炊くのさえ、水も火もいらず、チンで済んじゃうくらいだから味気ない。
今は、ゆりかごから墓場まで、いかにスムースに運んでもらうかを、競っているような時代なんだな。
根源的なことから遠ざかっていくと、どんどん生命がかすんでっちゃうよ。