瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

刀が欲しいと思ったことはない。
でも、今ここに刀がある。
実家を処分した時に、出て来ちゃったんで、もって帰ってきた。
刀は、もともと人を殺すための道具だから、ちょっとでも気になることがあれば、すぐ処分するつもりだった。
ところが、心を空っぽにして刀を持ち、鞘を払ってみたら、スッと手になじんでしまった。
その後、ちゃんと登録は済ませたから、不法所持ではない。
刀好きは、血眼で刀をあさるけど、思うようなのにはなかなか出会えない。
刀の方が、持つ人間を選ぶんだって言う人もいる。
刀屋に見せたら、「ニセモノだけど、引き取ってもいいよ」って言われた。
こっちはへそ曲がりだから、手放さなかった。
しかし、まさか自分が、刀に白い粉をはたく身になるとは、思ってもみなかったな。
これは、その昔、刀匠が魂を込めて鍛えたものだ。
それが、どこをどう伝わってきたのか、今ここにある不思議を思う。
心静かに座して刀に向かう時、そこに映るものは何か。
まだ至らないのか、なにも見ることは出来ない。
いつか、心が月のように澄みきった時、そこに何かを見るだろう。