瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

開眼

久々に、刀の手入れをした。
手入れって言っても、刀身の古い油を拭って、新しい油を塗るだけのことだ。
鑑賞が出来れば面白いんだけど、物の本を読んでみても、さっぱり分からなくて困る。
先ず、沸(にえ)と匂(におい)ってのが分からない。
刀屋に行って、実際に店の刀を持たせてもらって、じっくり教えてもらったら、少しだけ分かった。
それでも、家に帰って、いざ自分の刀に向かってみると、どれが沸だか匂だか区別がつかなかった。
それが昨日、刀身に打粉を打って、丁子油で磨いたら、見違えるように景色が浮かび上がって見えた。
研ぎに出したわけじゃないから、刀そのものに変化はない。
見所が見えてきたってことは、こっちの目が開いたってことだろう。
「うわっ、すごい」と思いながら、ためつすがめつ見ていると、どんどんすごいのが湧き上がってくる。
こっちの心が澄んでゆけば、もっともっといろんなものが見えてくるんだろう。
この刀が、どれだけの美を内に秘めているかは、それをすくい取るこっちの心如何ってことだな。
それ自身が光を放つわけではなく、見るものの心を映し出すあたり、刀って月によく似ている。