瞳堂の月下独酌―blog―

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歌川広重

歌川広重の浮世絵を見てきた。
広重と言えば、風景画だな。中でも一番有名なのが、東海道五十三次
広重は、風景の切り取り方が実に良くって、遠くの鐘の音や、風の匂いまで感じられるようだ。
雨の絵も多くて、線で表現した雨を、一本一本彫るところなんかは、彫り師の腕の見せ所だ。
空や海や川の表現には、ボカシが随所に使われている。
版画なのにボカシだってさ。まったく、あの摺り師の技には感服する。
先ず、広重の絵があり、彫り師の腕があり、摺り師の技がある。その三つが最高のレベルで揃ってはじめて、あの美しい浮世絵が生まれたんだな。
広重は、1797年に生まれ、1858年に62才で亡くなっている。
ペリーが来たのが1853年だから、晩年は江戸の町も騒々しかっただろうが、1868年の明治維新のドタバタは見ないで済んだ。
あのあたりで、浮世絵は息絶えたも同然だけど、1873年の改暦がトドメを刺したな。
文明開化だの欧米化だのって、どんどん乱暴になってく世の中じゃ、あの繊細な浮世絵は生きられない。
広重さんは、浮世絵が一番光った時代だけを生きることが出来て、幸せだったんじゃないかな。