瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

雲錦

雲錦(うんきん)って模様がある。
雲は桜で、錦は紅葉。
日本の四季のなかで、もっとも美しいといわれる景観を二つ一所に盛り込んだ、贅沢な模様だ。
それに、この模様は、実に使い勝手が良い。
たとえば、茶の湯で使う菓子鉢に、この雲錦模様が描いてあったとすると、雲(桜)の側を正面に向ければ春の趣向に、錦(紅葉)の側を正面に向ければ秋の趣向に使える。
それから、中間を使えば春秋以外もいけるから、結局、一年通して使うことが出来る。
ちょうど今、桜が盛りで、青空を背景に咲き誇る様は、まさに雲の如しだ。
桜並木はもちろん桜ばっかりだけど、ちょっと気の利いた庭なら、桜にまじってモミジがちゃんと植えてあって、黄緑色の萌えるような新芽を出している。
このモミジは、秋には見事に紅葉して、さながら錦のようになるのさ。
半年という時を越えて、桜と紅葉、雲錦模様を具現化した景色がそこにはある。
見渡す限り一面の桜ってのも壮観だけど、桜あり紅葉ありの調和の妙こそ、まさに日本の心なんだな。