瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

幽霊子育飴

京都の東山区に、轆轤(ろくろ)町ってのがある。
昔、その辺でドクロがザクザク出て来たから、髑髏(どくろ)町って言ったんだけど、江戸時代に轆轤町に改名された。
六道の辻も、あのへんだ。
そこに、幽霊子育飴ってのを売ってる店がある。
その昔、夜な夜な飴を買いに来る女がいて、不審に思った飴屋が、あとをつけて行くと、女は墓場に消えた。
墓から、泣き声がするから掘ってみると、赤ん坊が出てきた。
臨月の女が死んで土葬にされて、その後に、赤ん坊が生まれたらしい。
乳をあげられない女の霊が、飴を買って赤ん坊にあげてたって話。
簡単に、いい話だとは言えないものがある。
死んでなお、子を思う親心の凄まじさ。人の思いってのは、恐ろしいもんだ。
死ぬ者があれば、生まれる者がある。
良いとか悪いとかじゃなく、それがそういうものとして交わるのが、六道の辻なんだろう。
月が満ち、また欠けてゆくのも、同じことだ。
人の世の無常を、無言で物語っているんだな。