瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

くちなし

今日は、すごく蒸し暑かった。
歩いてたら、汗なんだか湿気なんだか分からないものに全身をつつまれる。
そんな湿気の中に、ひときわムンとする塊があって、まとわりつくような甘いにおいがする。
今年も来たなと思う。それは、くちなしの花の匂いだ。
こいつを嗅ぐと、祖父が亡くなった時の事を思い出す。
葬式の日、梅雨の晴れ間で、蒸れた庭に白いくちなしが咲いて、匂いの塊を漂わせていた。
においが、遠い記憶を蘇らせるのはよくある事だ。
それが毎年のことで、今日、6月29日が祖父の命日。
こっちが10歳の時に亡くなったんだけど、祖父としゃべった記憶がない。
それどころか、話し声を聞いた覚えが全くない。
祖父は警官で、「男はよけいな口を利くな」って言って、親父は育てられたそうだから、本人もよっぽど口数が少なかったんだろうね。
くちなしの花と、祖父の面影、妙なところでつながったもんだが、くちなしの匂いが何故か一等好きなんだな。