瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

茶の湯の道具に、棗(なつめ)ってのがある。
抹茶を仕込んどいて、点前中に使う蓋付きの丸っこい器だ。
木地をくり抜いて、漆を塗ったのがほとんどだけど、和紙の一閑張りのもある。
要は、はりこみたいなもんだ。
30年前、これなら作れると思って、青系のモザイクのをこしらえて、“彩”と名づけた。
これを茶会で使ったら、感激して泣き出した女の先輩がいた。
そして3年前、また棗を作り、思いつきで蓋のななめ上に小さな丸い玉をつけた。
名を“こもちなつめ”。
“こもち”とは、満月前夜の小望月の“小望”だ。
これを師匠に見せたら、「何やこれ」と言って、一瞬クスッと笑った。
茶道具で、人を泣かせたり笑わせたりするとは、まさに天才的と言えなくもない。