瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

人魚

世界各地に、人魚の伝説がある。
上半身が人で下半身が魚、そして世にも美しい。
これが逆だと、怖いけどね。
日本には、八百比丘尼(やおびくに)の伝説がある。
あやまって人魚の肉を食べた乙女が、十代の美しさのまま何百年も生きたって話。
結婚しても結婚しても亭主に先に死なれ、やがて尼さんになり、最後は世を儚んで岩窟に消えてゆく。
死なないことは願いでもあり、死ねないことは哀しみでもある。
実際は、死なない人はいないから、かえって切なく感じるんだろう。
人はみな死ぬと知りながら、ヒトという種が滅ぶことを知るものは少ない。
地球の長い歴史を考えた時、種としてのヒトの繁栄は、ほんの一瞬のことにしかすぎない。
それでも人は、永遠を望む。
人魚の肉を求めることは、種としてのヒトが滅びる近道を、駆け抜けようとするようなものだ。