瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

香のもの

漬物のことを、“香のもの”とも言うね。
“お新香”にしても“おこうこ(お香香)”にしても、どれも“香”って字がつく。
漬物は、香りっていうより匂いじゃないか。
“香のもの”とは、ずいぶん気取った物言いだと思ってたけど、あながちそうでもないようだ。
先日、朝茶事をやった。
朝茶事ってのは、夏場の茶事で、暑い時間をさけて早朝に催される。
懐石は朝食になるから、献立の内容は軽めである反面、“香のもの”には重きをおく。
五種類ほどを多めに盛るんだけど、素材本来の味を大切にした薄味の懐石の中にあって、際立つのはやっぱり“香のもの”の“香り”だってことに気づく。
歯ごたえ、食感、色、噛んだ時の音なんかも、味を構成する要素だけど、漬物は何といっても香りが命だ。
“香のもの”とはよく言ったもんだと、妙に感心させられた。