瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

邯鄲

“邯鄲の夢”って話がある。
昔、中国に藘生って男がいて、人生に迷っていた。
呂翁っていう道士に出会う。
栄華が意のままになる枕ってのを借りて眠った。
すると、人生の良いこと悪いこと、いろんなことが起こる。
やがて立身出世するんだけど、最後はこの世の常で死んでしまう。
ふと目が覚めると、さっき火にかけた粥もまだ煮えないくらいの、ほんの短い間の出来事だった。
人の世の栄枯盛衰は、夢のように儚いってことの例えだ。
カンタンって虫がいてね。
ルルルルルって美しい声で鳴く。
この虫の名は、“邯鄲の夢”から来ている。
透き通るような姿と短い寿命を、はかない夢になぞらえたんだな。
こっちは、カンタンの姿を見たことないけど、まあいいや。
窓を少し開けて、虫の声を聞きながら、短い夢でも見ることにする。