瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

西山

まわりは建物だらけだけど、唯一、西の方のビルの間に、ほんの少し山が見える。
京都の友達が病気だと知ってから、毎日、その山を見るようになった。
あいつの住む街の方角に、その山があるんでね。
朝起きて、山がスッキリと見えると、今日は少しいいのかなと思い、雲がかかっていれば、ちょっとシンドそうだなと思う。
山がどう見えるかなんて、天気次第だってことぐらい分かってるよ。
ちょいちょい顔見に行けないから、そんな風にして、心配してるつもりになっていた。
ある夜、その方角に、細く赤い月が沈んだ。
その時は、何も思わなかったよ。
次の日、関西方面に仕事があって、あい間に会う約束をしてたんでね。
結局、約束ははたせなかった。
この世は、起こり得ることしか起こらないのか。
今はもう、西の山はただの景色だ。