瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

油団

油団と書いて「ゆとん」と読む。日本の夏の敷物だ。
極く上質の和紙を、六畳なら六畳の大きさに敷き並べる。
それを糊で何枚も貼り重ねて3ミリほどの厚さにする。
そこに熱した荏の油を素手で何度も塗りこんで、天日で一気に乾かすという、手間隙おしまぬ素晴らしい仕事だ。
昔はよく「油団で昼寝すると風邪をひく」と言われたくらい、ヒヤリと涼しくなるそうだ。
ある実験で、油団の上は室温より2℃ほど低かったとあるが、そのメカニズムは科学的に解明されてはいない。
先人たちの知恵には、本当に感心する。
使い込むほどに色が深まり美しくなり、上手に使えば100年もつという、この芸術品を知る人は少ない。
自分が涼しくなるために、熱い風を他人に押し付けるクーラー的発想は、本来、日本人にはない。
油団的なつましく美しい生活は、月のしずくのようなもんだ。