瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

肥育

肉屋に並んでる肉は、ほとんど家畜や家禽の肉だ。天然ものは、めったに無い。
遠い昔のご先祖様は、もちろん天然だから、山や野原を駈けずり回り、好き勝手なもの喰ってたが、今、出回っているのは、何代にもわたって、狭いサクの中しか知らない動物の肉だ。
こっちの都合で、品種改良され、より早く、より大きく育つようになった。
商売だから、天然ものが育つのより、はるかに早く、大きく育てて売らなきゃいけない。栄養価の高いエサを与えて、激しい運動をさせずに大きくする。それが、肥育だ。
若いうちに殺されて、出荷されちゃうから、その後、どのように生きて、死んで行くのかなんて予想もつかない。
肥育が、生物にどのように影響し、どんな副作用があるのか、その成長から死に至るまでを、ちゃんと見届けた奴はいるのか。
そういう肉を食ってるんだから、人間も、多かれ少なかれ、肥育されているようなもんだな。
満月が見たいからと言って、月を早く太らせることはできない。それが道理だ。
肉にだって、道理ってもんがあるだろう。
肥育した肉を、毎日食う贅沢はいらない。年にほんの何回かでいい、天然の肉を食う贅沢がほしい。