瞳堂の月下独酌―blog―

瞳堂主人のブログです

おふくろの味

ニンニクと生姜のおろしたやつ、コショウにオールスパイス、それに醤油。このタレにつけた鶏肉に片栗粉をまぶして、油であげる。
これを昔、母が初めてこさえた時は、美味しくってびっくりした。
当時のうちの献立にしては、相当にエキゾチックだったからね。
この味は、今、そのまんま我が家に受け継がれている。
母が病気がちだったせいか、あんまし手の込んだものは、作らなかったような気がする。
それに、父が酒呑みだったから、子ども向きのおかずよりは、酒の肴みたいなものが、食卓に並んだ。
でも、よーく思い出してみたら、定番みたいなおかずも、いくつかあったな。
一番好きだったのが、揚げた鯵の野菜あんかけね。
あと、好きじゃなかったのが、マルシンハンバーグを、なぜか醤油あんかけにしたやつ。
今にして思えば、照り焼きハンバーグのハシリみたいなもんなんだが、出来れば普通に焼いてほしかった。
それに、イカの煮付け。これにもなぜかとろみがついてる。
うちの料理は、片栗粉なしには語れないってことだな。
それから、煮物の最後の味決めは、こっちの仕事だった。
出来上がると呼ばれて、一口味見して、醤油が足りないって言ってみたり、これで良いって火を止めてみたり、小学生のくせに板長さんみたいに偉そうにしてた。
前この話したら、「瞳堂さんちのおふくろの味って、瞳堂さんの味だったんだね」って言われたことがある。
言われりゃ、そうだ。
でも、本当のおふくろの味は、毎日のおみおつけだな。
どうってことない味なんだけど、こればっかりは、誰にもまねすることはできない。